監修:順天堂⼤学医学部 膠原病内科 名誉教授 髙崎 芳成 先生
2023年 1月更新
関節リウマチの関節破壊の進行は発症後早期から急速に起こることが分かってきました。
関節の腫れや痛みがひどくなくても、関節の内部では炎症が続き、関節破壊が進行していることもあります。
2010年に海外の学会で公表された関節リウマチ診療の推奨項目において、関節の腫れや痛みのない状態である「臨床的寛解」を目標とし、目標が達成されるまで、少なくとも3ヵ月ごとの薬物療法の見直しが必要とされています。
治療目標を達成し、臨床的寛解が維持できれば、治療薬を減量もしくは中止できる可能性があります。
関節リウマチ治療においては、現在世界的に共通の目標が設定され、その達成に向けた治療戦略を普及する活動が続けられています。
以下がその基本的な考え方です。
A. 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである
B. 関節リウマチの主要な治療ゴールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、
身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、
患者の長期的QOLを最大限まで改善することである
C. 炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要である
D. 疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による
「目標達成に向けた治療(Treat to Target; T2T)」
は、関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である
Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis.2010.69:631-637
1. 関節リウマチ治療の目標はまず臨床的寛解を達成ことである
2. 臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する
3. 寛解を明確な治療目標とすべきであるが、現時点では、
進行した患者や長期罹患患者は、低疾患活動性が当面の目標となり得る
4. 治療目標が達成されるまで、薬物治療は少なくとも3ヵ月ごとに見直すべきである
5. 疾患活動性の評価は、中~高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性
または寛解が維持されている患者では
3~6ヵ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない
6. 日常診療における治療方針の決定には関節所見を含む総合的疾患活動性指標を
用いて評価する必要がある
7. 治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び
身体機能障害もあわせて考慮すべきである
8. 設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて維持すべきである
9. 疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、
合併症、患者要因、薬剤関連リスクなどを考慮する
10. 患者は、リウマチ医の指導のもとに、「目標達成に向けた治療(T2T)」
について適切に説明を受けるべきである
Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis.2010.69:631-637