監修:順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 院長 髙崎 芳成 先生
2024年 7月更新
変形性関節症は加齢、肥満、肉体労働や激しいスポーツなどによる関節の使いすぎなどの原因によって関節の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかることで関節内に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じる病気です。膝関節や股関節などの部位に好発するものとしてよく知られていますが、手指の関節にも起こります。変形性関節症では、関節リウマチのように症状が全身の他の関節に同時に現れることはほとんどありません。
女性ホルモン(エストロゲン)には腱や滑膜(関節を包む膜)の保護作用があります。そのため、更年期にエストロゲンの分泌が不安定になると、腱や関節の柔軟性が徐々に失われ、手足のこわばりや関節痛として症状が現れることがあります。
線維筋痛症は、体の広い範囲にわたって原因不明の痛みが3カ月以上続き、強い疲労感・倦怠感などの多様な不快症状が現れる病気です。血液検査やCT検査、MR検査など、さまざまな検査を行っても特別な異常がみられないことが特徴です。
「乾癬」という皮膚病の患者さんに関節炎が現れることがあります。主に手や足の指の関節で症状がみられますが、背骨や付着部と呼ばれる腱や筋の付け根に炎症をきたす場合もあります。関節リウマチとは異なり、関節炎は非対称性に現れることが多いです。また、乾癬性関節炎ではリウマトイド因子(関節リウマチ患者で多くみられる血液中の物質)が陰性です。
細菌やウイルスの感染によって関節炎が生じることがあります。発熱や発疹の有無、血清中の抗体価、抗原の有無などから関節リウマチとの鑑別ができます。
痛風とは、尿酸という物質の結晶が関節内に沈着し、関節とその周辺に痛みのある炎症の発作が生じる病気です。一方、偽痛風はピロリン酸カルシウムという物質の結晶が関節内に沈着することで関節炎が生じます。関節リウマチとの鑑別では、関節液中におけるこれらの結晶の検出が重要となります。痛風では特に足の親指の付け根部分の関節に症状が現れることが多いですが、偽痛風では多関節に腫れや痛みが及ぶこともあり、発熱、体重減少などの全身症状を伴う場合もあります。
リウマチ性多発性筋痛症は、原因が判明していない炎症性の病気で中高年に多く発症します。症状としては、微熱、食欲不振のほか、肩や腰周辺の筋肉痛などが主にみられます。肩関節や股関節などの大きな関節の周囲で痛みや可動域制限(関節があまり曲がらなくなっている)を来たすことが多く、関節リウマチのように手指などの小関節が侵されることは稀です。
主に涙腺、唾液腺といった外分泌腺が障害される自己免疫疾患で、ドライアイやドライマウスといった乾燥症状のほか、関節炎、発熱、倦怠感、間質性肺炎、腎炎、神経症状、紫斑、紅斑など、全身に症状が現れることがあります。関節リウマチのような関節破壊や変形を伴うことは稀です。関節リウマチの患者さんに発症することが多く、関節リウマチの患者さん約20%1)にシェーグレン症候群が発症すると言われています。
免疫系が自分の体を攻撃するようになり、全身にさまざまな炎症を引き起こします。原因は今のところわかっていません。症状としては、全身症状(発熱、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振など)、皮膚症状(蝶形(ちょうけい)紅斑(こうはん)と呼ばれる頬にできる赤い発疹など)、関節症状がほとんどの患者さんに見られます。これに、さまざまな内臓、血管の病気が加わることもあります。関節リウマチとの違いとしては、全身性エリテマトーデスでは関節の破壊や変形が関節リウマチよりも起こりにくいとされています。
全身性強皮症は皮膚や内臓が硬くなっていく病気です。原因ははっきりとはわかっていません。手指の屈曲拘縮(手指が曲がったままになること)、関節痛、便秘、下痢などが起こる場合もあります。この病気の特徴としては初発症状として「レイノー現象」が出現することです。レイノー現象では、寒冷刺激や精神的緊張によって手や足の指先の細い動脈が発作的に収縮し手足の血流障害が起こります。その結果、手足の指の皮膚が真っ白あるいは青紫に変色する状態が認められます。レイノー現象が悪化すると、指先が荒れて潰瘍を生じ、強い痛みを感じるようになることもあります。
皮膚筋炎・多発性筋炎は、筋肉の炎症により、筋肉に力が入りにくくなる病気です。主な症状としては倦怠感、疲労感、食欲不振などの全身症状があり、稀に発熱を起こすこともあります。また、皮膚筋炎では皮膚症状があり、紅い皮疹が顔や手を中心に現れるのが特徴です。筋肉の症状と皮膚の症状以外では関節症状(関節痛・関節炎)や呼吸器症状(間質性肺炎)、があります。関節症状では、関節リウマチのように関節の破壊や変形が生じることはほとんどありません。レイノー現象が比較的よく現れますが、全身性強皮症の場合と違い、多くが軽症で指先に潰瘍ができたりすることはほとんどありません。
全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎にみられる症状が部分的に混在し、血液の検査で「抗U1-RNP抗体」自己抗体が高い値で検出される病気です。この病気のほぼ全例でレイノー現象が認められ、初発症状として表れることが多いとされています。全身的な診察と血液その他の検査により関節リウマチとの鑑別が可能ですが、関節炎は時に関節リウマチと区別のつきにくい関節の変形を伴う場合があります。
1) 難病情報センターwebサイト(閲覧日:2024年7月5日)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/111